「ミッションを作り直して、浸透させる」伴走型コンサルティングでミッション経営の実現へ
株式会社フクナガエンジニアリング
事業内容
保管・運搬用フレコンバッグの製造・販売、産業車両用ノーパンクタイヤなどの製造・販売、金属資源リサイクル
設立
1994年
従業員数
28名
取締役 野村 景
取締役 野村 景 様

【伴走型コンサルティングでミッション経営の実現へ】

ーまずはフクナガエンジニアリングの事業や強みを教えてください

もともとは金属スクラップの会社で、大阪市の城東区で、70年前からずっと金属関係の仕事をしています。

金属加工の街である東大阪に近いので各工場から出てくる、打ち抜きくず、削りくずなどのいろんな金属のくず類が当社に集まってきて、それを金属の種類別に分けて、製鋼所に持ち込むというような中間問屋の仕事をしてきていました。

金属スクラップって、大きな袋に入れて運搬するのです。また、当社もある程度の広さのヤードを構えてますが、重機を走らせたり、はたらくクルマを色々使ってました。そこからの派生で、現在ではフレコンバッグという運搬用の袋や車両に使われるノーパンクタイヤを当社で販売するようになりました。

創業以来の共通点としては、金属スクラップ事業から派生してユーザーの立場から、事業を起こしてきたというところですね。ユーザー視点で商売をずっとしてきているので、提案内容だったりはユーザーからの声が高いので、それは当社の強みですね。

ー70年会社を続けられることがどれほどの偉業であるか、スタートアップの私には非常によくわかります(笑)。現在組織はどのような状況なのでしょうか?

社員数は32人です。ベトナムをはじめとした日本国籍でない方にも多く在籍しています。売上規模は10億円ほどです。

ー現在の野村さんのお仕事はどのような感じなのでしょうか。

大きく分けて1.国内事業の責任者、2.人事の責任者の2つの分野を取締役として統括しています。1つめの内容としては、フレコンバックの営業部隊としてサポートグループのチーム、タイヤ事業の営業部隊としてのタイヤチーム、両方のマーケティングチームの3つがあります。部下は1、2両方の分野で合わせて10人ほどです。

ー1年ほど前にミッション・ビジョン・バリューを新たに策定されたのですよね。どのようなミッションになったのですか

「新たな常識を作れ」です。参加したマネージャーを含める10人ほどの中で、1番腑に落ちたものでした。もともと金属資源のリサイクル業者として始まった弊社ですが、現在はフレコンバッグやノーパンクタイヤが主力商品となっている。これらはリサイクル業を行う中での課題から生まれたものです。

リサイクル業者がタイヤを作る、これは常識破りの新規事業だったと思います。そういう意味でも、今までの会社の歩みを言語化できた感じがしました。

「事業の意味が薄れているのを見過ごしていたところに起こったコロナ禍、そしてミッション経営へ」

ー当時ミッション。ビジョン、バリューを新たに作ろうと思った背景はどういったものだったのですか

私の目線でいくと、もともとフレコンの事業にしろ、タイヤの事業にしろ、多少はエッジが効いてはいたのですが、年数が経つにつれて、ライバルも同じような会社が増え始めて、ここ十数年でそのエッジも徐々に丸くなり始めていました。

特に、フレコンの事業に関してだと、エッジもなく、まん丸になりつつあったんです。以前代表の福永にフレコン事業しかなければ、とっくに会社を辞めていますって言ったことがあるんです。事業の意味が徐々に薄れているのを従業員みんな感じていて、でも具体的なアクションは起こさずに、何年もやってきたっていうのがあります。

フレコンの事業を続けていくにしろ、事業としての意味づけが欲しいと思い始めたのが、2、3年前にあってそこでコロナも起こり、本当に変えていかないとやばいねという話になったのがきっかけで「ミッション経営」がという話が出てきた感じです。事業の意味づけや、なぜフクナガがするのかという所の意味づけに視点をおいています。

ー実際やってみていかがでしたか

とにかく2歩進んで3歩下がるっていうのを繰り返していました。

実は「新たな常識を作れ」というのを検討し始めてから1ヶ月ぐらいで、既に青写真が出来ていました。ただ、ミッションはそんな短期間で作るもんじゃないということで、1年ぐらいかけて、2歩進んで3歩進んでいました。なので、結果最初の1ヶ月とそんなに変わらないことを1年かけてやっていたんだなという感じになりました。そこから自分たちで進めることの難しさは、痛いほどわかりました。

ーどのあたりが1番難しかったですか?

本当の1番最初の段階では、ミッション、ビジョン、バリューの意味もわかっていなかったので、当時取引があった教育研修系の会社の方に、本当にさわりの部分だけを教えていただいて、そうなんだ!という部分からスタートしました。

そこから先は伴走者はいなかったです。その分、わからないなりに色々調べて取り入れようとするから、そのプロセスがやりすぎたなと思っています。色んな所から理想形を引っ張ってきて、自分たちで議論はするんですけど、その理想形がうまく自分たちの形にはまらなかったり、違うなという部分が多くて、3歩下がるというのを繰り返していました。

ー外部のコンサルタントを入れず、社内で作り上げられたのですね。それらの情報収集というのはどうやってなさっていたのですか?

主に担っていたのが代表取締役の福永なのですが、色々なウェビナーに参加させていただいて、色々アドバイスを頂いたり、あとはネットで情報収集したりしていました。

ーところが新たなミッション策定から一年半。ミッション経営への手応えをなかなか得ることができないと、弊社にお声がけをいただきました。弊社を選んでいただいた決め手はなんでしたか

前のミッションはみんなで議論してつくった体裁でしたが、実際は経営層がリードしてつくったものだったこともあり、また、非常に抽象的なミッションだったこともあり、マネージャーもメンバーも、「何が新しい常識なのか・新しい常識をつくる行動って何なのか」が定義できずかなり苦戦していました。

そこでもう少しメンバー自身が日頃の行動軸にできるようなミッションに作り直そう、ということになったのです。前回、社内で完結させて非常に時間が掛かったので、今回は外部のコンサルタントを入れることにしました。O:さんにお願いすることに関し社内で議論をしたりっていうのはなかったのですが、私個人の見方では伴走する距離感が1番近くに感じた事が決め手でした。

「Co:TEAMはパッケージがなかったのがよかった。なにより、我々のことをまず知ろう、とアクションを起こしてくれた」

ー伴走の内容で言うと他社は?

他社はパッケージありきな提案があり、そこからフクナガのヒアリングを通してパッケージを調整していくというパターンが多かったのですが、CO:TEAMは決まった型がなかったのが逆に印象として良かったです。

それより前にもっとフクナガを知って、フクナガ全員のキャラクターを知ろうと先にアクションとして起こしてくれた印象があるので、それが「伴走が近い」という印象に繋がったかなと思います。

ーMVVの策定は役員だけでなくマネージャーを巻き込んでやったそうですが、どういった背景があったんですか

会社のキャラがそういうものだった、という感じでしょうか。もともと小学生が転がっているボールにわらわらと集まるような、そんな雰囲気が会社にはあります(笑)

それに、いずれにしてもマネージャーに落としてそれからメンバーに落としていくので、それなら創り上げていく過程に最初からいた方が良いという考えもありました。

ー最初に創られた時と、今回創られた時のマネージャーは何か変わりましたか?

発言の機会は今回の方が多かったです。前回は一緒にはやってはいましたが、常に役員とマネージャーの11人で議論する場があって、そうなるとどうしても役員が発言する機会が多くて、マネージャーの中でも発言する人しない人もいますし、多少むらがあったりした部分があったと思います。

今回に関しては、全員で話す場も、グループで話す場もあったりで、発言のボリューム自体はトータルで増えたんじゃないかと思います。結果として「社会に埋もれている種をみつけて 新しい価値に育てよう」という新しいミッションをみんなで創り上げることができました。前回のものと主旨は近いかもしれませんが、社員が行動の基軸にしやすくなったと思いますし、またみんなの意見がきちんと反映されたものになったと思います。

ー今回、ミッション、ビジョン、バリューを再策定するにあたっては、経営層/マネージャーの役割についてどのようにみられていましたか?

ミッションを創り始めるにあたって、1つキーワードとしてあがっていたのは、ボトムアップでありたいということでした。ミッションを創るプロセスでも、役員の中では、自分たちがどんどんだして、意思決定していくというよりも、なるべく意見を言ってもらって、決める時も強引に決めるのではなく、合意の上で決めていきたいということはもともとありました。

マネージャーに対しては、普段の仕事がそれぞれのチームの責任者としてチームの責任を負う立場ですので、どうしても主語が「我々のチームは」という風になりがちではあります。役員と同じ場で何かを決めるような時は、いつも「我々のチーム」になっている主語を「我々の会社は」と、一段引き上げて物事を考えられる時間にしてほしいと、そういう視座を持ってもらえる時間にしたいなと思っていました。

「会社のミッションと個人のミッションをつなげることが会社のエネルギーになる」

ー御社では個人のミッションと会社のミッションをすり合わせていくことが日常的に行われています。素晴らしいことだと思うのですが、そこに至った背景はどのようなものでしたか

そこを議論したことはあまりないですが、おそらく、会社の過去を10年20年単位で見た時に、1990年や2000年に入ってすぐの頃は現在より会社っぽい感じがなかったんです。ガチャガチャしてて妙な勢いがあってバカばっかりで、みたいな雰囲気だったんですけど(笑)でも、時が経つにつれてちゃんとした会社になってきて、何をするにしても一旦考えてからするようになって、前と比べるとどうしても元気がなくなってきたね、みたいな印象があったと思うんです。

その解決策として、仕事が、会社が、という部分だけではなく、自分の夢のために、それを達成するためには、みたいな要素がやっぱりいるのではないかというのがきっかけになっているのだと思います。

ー今回ご一緒に取り組ませていただくにあたりご懸念はありましたか

僕自身が懸念していたことは、社内の考え方として、議論を尽くして尽くして答えがない、というところに落ち着いてしまう傾向があって、結果として前回の一年間は2歩進んで3歩下がるという進み具合だったのだと思っています。

そこに谷本さんが入り、スケジューリングしていただいて、僕らからすると、当然社外の方にファシリテートしていただくのであればスピードアップしたいという気持ちと、今までのペースと比べて、このままで本当にやっていけるのかという部分というか、僕たちのペースをわかっているのかと思ったことはありました。今回は全体で2ヶ月ぐらいだったと思うんですが、前の一年と比べるとすごく早かったと思います。

ーやってみて、マネージャー、経営層の方々との関係性など変化はありましたか

発言は前よりもポジティブに、周りを気にしないでできるようにはなった気はします。まさに、心理的安全性があがったのかもしれないです。

ーなにが心理的安全性に繋がったと分析されていますか

谷本さんのファシリテーションでワークショップを夜遅くまで延長してやったことがあったんです。長時間且つ時間も深い、今までそんなことはありませんでしたから、そこでもう全員が壊れたような、壊れたというのは間にある壁、なのかもしれませんが(笑)そんな非日常を一緒に経験したことが効いて一体感が生まれたのかもしれません。

ーあの日はなかなかハードでしたね、そんな場に立ち会うことができ、大変光栄です(笑)
他にやってよかったポイントなどはありますか

ワークショップなどをやっていただいたうえで、1番社内で残っているものは「過去年表」の話だと思います。例えば、今まで過去の業績を見たときに、間違いではないが、みんなの意見が個人の思いから発せられていたというかバラバラだった気がします。それが、過去を一緒に振り返ることで、いったん立ち戻るような場所がひとつできて、そこが大きいかなって思います。

ーリサイクル事業からはじまった御社ですが現在は「環境」という言葉を使わなくなったのですよね。そこは何か影響がありましたか

「環境」ということを今まで自分たちに言い聞かせていたせいで、行動範囲を狭めていたことが絶対ありますし、それを開放できたことがとても大きいと思います。

ー今回ご一緒させていただいて野村さん自身が変わった部分はありますか

その会議の席上で、最終的には決める人がいるという状態で色々議論が出来たので、結果的にそれが、不要な迷い道に入り込まなかった要因かなとポジティブな意味でとらえています。やっぱり通常の業務内のコミュニケーションでも、結果決める人が誰なのか、いるのかいないのかっていうのがとても重要なことだったことがわかりました。前述したように「議論をしつくして答えがない」という着地をしがちな体質でしたのでそれが、2歩進んで3歩下がっていた原因なのかなって思っています。

今回は谷本さんが「決めるべき人に決めてもらう」というところを頑張ってファシリテートしてくれましたので、「決める人が誰か」を明確にすることは話し合いを建設的に着実に進めていくというのにおいてとても必要だということがわかりました。

ー心理的安全性が約束された中で、今後、どのようなことが起きそうですか?

営業部を中心にみることが多いのですが、お客様の生の声や、今最前線で起こっていることなどっていうのが、従来よりスムーズにあがってくると良いなと期待しています。もちろん意見をする場での心理的安全性は大切ですが、事業の中で想定外のことが起ころうとしている時や、良くないことが起こってしまっている時に、すぐに報告ができるかどうかもとても関わってくるものなのだと思います。

ー費用対効果はどうですか

直感で、社内で同じことをやっていたとしたら、1年はかかっていたと思います。その時間と労力を考えると、安いと思います。

ーミッション、ビジョン、バリューの再構築が必要だなと思う企業はどんな特徴があると思いますか

経営理念や社訓を掲げているところは多いですが、中にはどうとでも捉えられるような表面だけの経営理念なども多いと思います。社員さんから見たときに、その経営理念が個人の業務遂行上の優先順位や迷ったときの判断基準にならないのであれば、そういった会社こそミッション・ビジョン・バリューは明確に立てるべきなんだと思います。

ーミッションを再構築するべきな、マッチしそうな会社はありますか

中小企業ほど攻めるべきだと思っています。会社規模がそこまで大きくない方が浸透させやすいし動きやすいですから。確固たるカルチャーを構築して会社の色をきちんと作れると思います。

ーありがとうございました!